老中首座・松平定信の密命を受け、禁裏付として京の都で苦闘を重ねていた東城鷹矢。シリーズ第六弾となる本書で、ついに彼は、本格的な攻めに転じる。近江坂本への物見遊山に仕掛けられた罠をあえて受け、危機に陥りながらも、これを切り抜けた。そして襲撃犯の証言を得て、命を狙ってきた公家たちをやり込めるのだ。わずかな味方を除けば四面楚歌の状態で、苦しみ続けてきた鷹矢だけに、その姿は痛快であった。
とはいえ鷹矢は、幕府と朝廷の間に置かれた駒だ。帝との面会が実現しそうだが、接近し過ぎれば、容赦なく始末されるだろう。混迷した状況の中で、主人公がどう動くのか。シリーズの先が、ますます楽しみだ。
さらに、前作で鷹矢の家を追い出された下級公家の娘・南條温子も、自分の意志で生きる道を決めた。これにより、江戸から鷹矢のもとに送り込まれた布施弓枝と、女の戦いが勃発しそう。覚悟を決めた彼女たちの人生も、読みどころになっているのだ。
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