谷津矢車のデビュー作『洛中洛外画狂伝』の続篇が刊行された。主人公は、安土桃山時代の絵師・狩野永徳。若き源四郎(永徳)の彷徨を見つめた前作を受け、本書では彼のさらなる修羅の道が描かれる。
今や狩野工房の主力として、精力的に絵を制作する源四郎。しかし彼は、さまざまな
狩野工房を背負った源四郎が、いかにして何もかも捨て、己の絵に専念したか。作者は、信長を始めとする戦国武将や、絵師の海北友松・長谷川信春(等伯)など、多数の人物を絡めて、その過程を鮮やかに表現したのだ。
さらに、本能寺の変の真実や、千宗易(利休)の大望など、それだけで長篇になるネタが、惜しげもなく使われている。こうした、贅沢極まりない物語の作り方も、谷津作品の大きな魅力なのである。
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