風野真知雄の奇想、尽きることなし。どんな穴でも開けるという珍商売「穴屋」を営む佐平次を主人公にしたシリーズ第四弾は、相変わらずのアイディアてんこ盛りだ。上田藩の藩士が、相合傘に穴を開けてくれと依頼する第一話から、ページを繰る手が止まらない。難しい仕事が予想外の方向に転がる第二話や、ミステリー仕立ての第三話など、バラエティに富んだストーリーが堪能できるのだ。
さらに第五話から、松代藩真田家と関係を持った佐平次。真田家に隠されているらしい財宝の在り処を突き止めるため、六文銭の穴の謎に挑むことになる。ここで出てくる暗号が、よく考えられており、感心してしまった。あの手この手を駆使して、とことん読者を楽しませようとする姿勢が、嬉しくてならないのだ。
また、主人公たちの魅力も見逃せない。佐平次夫婦の暮らす長屋の住人は、誰もが仕事が好きで、生きるのが楽しそう。そんな人たちの賑わいが、なんとも気持ちいいのである。
〝穴屋でございます〟シリーズはこちらです。