元気な少女を主人公にした、痛快時代小説を読みたい。そんな願いを抱いている人にお薦めしたいのが、柏田道夫の長篇である。ヒロインのお駒は十五歳。名人と呼ばれる曲独楽師・四代目松井源水の娘で、自らも曲独楽師をしている。また、死んだ母親からは掏摸の腕前を引き継いでいた。
そんなお駒が、母の形見の根付を狙ったらしい男たちの巾着を掏摸取ったことから、騒動の渦中に飛び込んでいく。折しも江戸では、次々と香具師が殺され、目明しでもある源水が事件を追っていた。この件も関係があるのだろうか。家族との関係に悩みながら、お駒は果敢に前進していく。
本書の一番の魅力はヒロインである。じゃじゃ馬で頑固者。何度、父親に怒られようと止まらない。十五歳の少女の行動力が、なんとも楽しいのだ。
しかも中盤を過ぎると、一連の騒動に、お駒が深くかかわっていることが判明する。ヒロインの存在感を引き立てるストーリーも、見事なものであった。