麻倉一矢の「雅や京ノ介」シリーズは、第三弾で、大きく状況が変わった。前作の騒動により、主人公の京ノ介が、町方役人に追われる身となったのだ。帝の血を引き、朝廷のために江戸で活動する京ノ介だが、そんなことを知らない岡っ引の追及は執拗だ。
そんな折、とんでもない情報が飛び込んでくる。京ノ介の父の桜町帝と、兄の桃園帝が、幕府により密殺された可能性があるというのだ。これにより激高する討幕勢力を、冷静に抑えようとする京ノ介。しかし、かつて討幕に賛同した諸藩の名を記した連判状も絡まり、事態は紛糾していく。
朝廷と幕府。水戸家。外様大名。さらには南朝の末裔まで登場し、物語の行方は混迷を深める。その渦中で、自身が台風の目となりながらも、現実を見据えて行動する、主人公が恰好いい。
しかも今回は、剣の同門との死闘がある。秘剣まで使ったチャンバラ・シーンに、興奮せずにはいられない。このシリーズ、ますます面白くなってきた。
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