かつて二冊だけ刊行された、上田秀人の「斬馬衆お止め記」シリーズが、上下巻になって帰ってきた。なぜ続かなかったのか理解不能なほど、面白い作品だけに、この復刊は大歓迎である。
主人公は、信州松代真田家の家臣で、斬馬衆の仁旗伊織だ。ちなみに斬馬衆とは、戦国時代の合戦で、本陣にまで突っ込んできた、敵の騎馬武者を止める役目。刃渡り七尺の大太刀を振るい、馬の足を斬るのである。
徳川の世では、無用に見えた斬馬衆。だが、老中の土井利勝が、真田家の取り潰しを画策したことから、公儀隠密への備えを命じられる。かくして伊織は、激しい戦いに身を投じるのであった。
刃渡り七尺、全長一丈という、時代小説でも類のない大太刀。それを使った伊織のチャンバラは、とんでもない迫力だ。一筋縄ではいかない幕閣と真田家の動きと併せて、上田作品の魅力を堪能した。
なお、カバー・イラストは上下巻で一枚の絵になっている。並べて楽しんでいただきたい。
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