本サイトで好評連載された幡大介の大作が、いよいよ単行本になった。不世出の武将・太田道灌の生涯を描いた歴史長篇だ。
といっても道灌が主役になるのは第三章から。それまでは道灌の父親を中心にして、終わることなき関東の戦が綴られていく。応仁の乱のはるか以前から、関東は戦国時代同様の有様だったのである。
そこに足利学校を辞した道灌が登場する。若き頃の戦で、はからずも将才と謀才を発揮した道灌。やがて成長した彼は、扇谷上杉家の家宰として、上杉一門の抗争や、関東公方との対立など、さまざまな戦いで武威を示めすのだった。
道灌が生きた時代は、室町時代から戦国時代へと移行しようする変革期に当たる。その最先端を駆け抜けながら、ついに彼は時代の殻を破ることができない。このような武将の肖像を作者は、権力構造や社会構造の変化を解き明かしながら、雄渾な筆致で描き尽くした。史実と物語をハイレベルでミックスした、素晴らしき歴史小説なのである。
『騎虎の将 太田道灌〈下〉』はこちらです。