麻倉一矢の「将軍の影法師 葵慎之助」シリーズも、本書で五冊目となる。徳川七代将軍家継の叔父で、九代将軍家重の守護者。葵の若様こと勝田慎之助は、新たな騒動に立ち向かう。
江戸で横行する狐面の一味による付け火。その正体は、美濃の郡上一揆のあぶれ者たちなのか。火の用心の見廻りに出た慎之介は、美濃の庄屋の娘・澪と出会ったことから、この一件と深くかかわる。どうやら一揆の裏には、将軍の地位を狙う御三卿の田安家と一橋家の暗躍があるようだ。さらに尾張藩主の徳川宗勝まで絡まり、事態は紛糾。将軍家と郡上の農民のため、慎之助は奔走する。
江戸期に起きた大規模な一揆にもかかわらず、なぜか郡上一揆は、歴史・時代小説の題材になることが少ない。その一揆を取り上げ、興趣に富んだストーリーとしたところに、本書の面白さがある。慎之助と仲間たちが敵と対決する、クライマックスまで、読みごたえは抜群。爽やかなヒーローの活躍を楽しんだ。
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