若さま大団円

諸国を駆けろ

レーベル：徳間時代小説文庫
出版社：徳間書店
刊行日：2017年8月3日
価格：640円+税
判型：文庫

　剣は柳生新陰流、将棋は名人級の腕前。徳川十一代将軍家斉のご落胤だが、旗本から料理人になり、愛妻と共に団子坂で「あまから屋」を開いた飛川角之進。これだけでも彼の人生は尋常ではないが、シリーズ第八弾の本書で、さらなる変転を迎えることになる。
　訳あって美濃前洞藩の藩主となった角之進。隣藩との確執を解決すると、藩主の座を譲り、「あまから屋」の主人に戻った。しかしそれも束の間。諸国悪党取締出役に任命され、諸国を駆けることになるのだった。
　主人公が将軍のご落胤ということを考えると、本シリーズは、貴種流離譚といえるかもしれない。だとしても角之進の人生は、波乱万丈すぎる。
　しかも藩主時代にやり残した一件が、諸国悪党取締出役になったことで解決するなど、ストーリーが巧みだ。また「あまから屋」の出す料理が、どれも美味しそう。多数の文庫書き下ろし時代小説のシリーズを抱える倉阪鬼一郎だが、その中でも、読みどころ満載の作品なのである。

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