二〇一七年の前半は、平谷美樹祭りである。なにしろ四社合同企画で、次々と新刊が刊行されているのだ。本書は、その第二弾となる。主人公と仲間たちが〝鉄〟に関する大騒動に立ち向かう、壮大なスケールの伝奇小説だ。
金矢藩の鉄山奉行だった鉄鐸重兵衛は、藩の改易により、今は江戸で屑鉄買いをしている。三人の仲間と同じ長屋で暮らしており、それなりに毎日を過ごしていた。しかし、流星鉄(隕鉄)の小柄を持ち込んできた子供が、家族もろとも殺されたことを切っかけに、とんでもない騒動に巻き込まれるのだった。
主人公の出自や藩士時代の役目。騒動の焦点となる兼地領の鉄山。昔から製鉄を生業としてきた歩き筋踏鞴衆から聞く、製鉄の歴史。本書の内容は、とにかく〝鉄〟まみれである。博覧強記の作者による、さまざまな鉄に関する話が興味深い。
そしてクライマックスでは、鉄を使った、驚くべきアイディアを投入。読者の度肝を抜いた。この面白さ、鉄板である。