「読楽」に好評連載された、上田秀人の長篇が、ついに刊行された。主人公の小宮山一之臣は、盗賊の見張り役を務める浪人者。しかしそれは仮の姿である。相馬中村藩から盗まれた、将軍家から下賜された茜の茶碗の行方を追って、身をやつしているのだ。だが、藩の援助もなく、あてなき捜索を二年も続けてきた一之臣の心は擦り切れそうである。
一方、相馬中村藩を利用しようとする老中の田沼意次が、茜の茶碗の件を嗅ぎつけた。茶碗を求める意次に苦慮した藩は、さらなる難題を一之臣に押しつける。
盗賊になってまで任務を遂行しようとする一之臣。彼を中心に、正統派の盗賊と外道な盗賊、一之臣に惚れている
そして藩の非道な仕打ちに耐えかねた一之臣は、信頼できる盗賊と共に、自分のための戦いに身を投じる。権力に対する、