麻倉一矢の「将軍の影法師 葵慎之助」シリーズは、第三弾になって、ますます絶好調。七代将軍の叔父にして、公人朝夕人後見役の葵慎之助が、今回も心躍る活躍をしてのけた。
町火消〈を組〉の頭取・朝沼の愛犬が、瀬戸内塩飽衆の男女と一緒に、金毘羅参りから戻ってきた。これが縁になり慎之助は、家康が塩飽衆に与えた御朱印状を巡る騒動にかかわることになる。どうやら慎之助と道場の同門だった三浦左膳が、御朱印状を盗もうとしたらしい。その裏には、将軍の地位と、幕府水軍の座を狙う者たちが犇めいていた。将軍家の安泰のために、慎之助は立ち上がる。
宝暦治水を絡めた前作『薄氷』に負けず劣らず、本作のスケールも大きい。現在では塩飽衆しか必要としない御朱印状から始まった物語は、なんと八代将軍吉宗が隠した徳川家の秘密へと繋がっていくのだ。もちろんチャンバラも充実。江戸を舞台にしながら、これだけ大きなストーリーを創るところに、作者の才気が感じられた。
〝将軍の影法師 葵慎之助〟シリーズはこちらです。
将軍の影法師 葵慎之助
拝命
レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行年月:2016年7月1日
価格:650円+税
判型:文庫




将軍の影法師 葵慎之助
薄氷
レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行年月:2016年10月7日
価格:640円+税
判型:文庫



