書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

伊庭八郎 凍土に奔る

秋山香乃/著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2017年3月3日
価格:770円+税

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 この人物が、たまらなく好きだ。秋山香乃の歴史小説を読んでいると、そんな作者の想いが伝わってくる。維新の動乱を駆け抜け、箱館戦争に散った剣士・伊庭八郎を主人公にした、本書もそのひとつである。
 しんぎょうとう流の宗家に生まれ、凄まじき剣才を発揮した八郎。鳥羽・伏見の戦いから負け続ける佐幕側で、遊撃隊の一員として奮闘する。箱根山崎の戦いで左腕を失っても、彼は止まらない。盟友である土方歳三の待つ、北の大地を目指すのだった。
 江戸っ子気質かたぎで、熱い魂を抱えた若き剣士と、遊撃隊を始めとする仲間たち。時代の逆風に立ち向かう、男の生き方が恰好いい。迫真の戦闘場面や、ほうじゅんな人間ドラマなど、読みどころは満載。幕末小説と剣豪小説の面白さを兼ね備えた秀作だ。
 なお、文庫の表紙と口絵を担当した崗田屋愉一(旧・岡田屋鉄蔵)は漫画家であり、伊庭八郎を主人公にした『MUJIN ―無尽―』という作品がある。本書と併せて、お薦めしておきたい。

細谷 正充

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ほそや まさみつ

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