鳥羽亮の剣豪小説は凄まじい。石舟斎・宗矩・十兵衛――柳生三代を主人公にした本書を読んで、あらためてそう思った。
剣聖・上泉伊勢守から新陰流を学び、『無刀取り』の会得を託された宗厳(石舟斎)。徳川家康に取り立てられ、戦場で剣の腕を示しながら、柳生新陰流の地位を確立していく宗矩。将軍への剣術指南をしくじり、柳生の里に逼塞したが、宗矩に諭され廻国修行に出かける十兵衛。戦国から徳川へと向かう時代の中で、柳生新陰流が泰平の世の剣として、いかに広がり、深まっていったか。最初から最後まで剣戟の響き鳴り止まぬ物語に、その答えがある。
また、上泉伊勢守が説明する殺人剣と活人剣の違いや、宗厳が披露する『無刀取り』など、新陰流の極意が、分かりやすく描かれている。そこも本書のポイントとなっている。自身も剣道の達人であり、長年にわたりチャンバラ・シーンを書き続けてきた作者だから、これほどの剣豪小説を生み出すことができたのだ。