戦乱の世を生きる真田家の男たちを活写した、幡大介の「真田合戦記」シリーズが、第七巻に突入した。作者の人間観照は鋭く、真田幸綱が主君の武田信玄について〝いつでも殺せる家臣しか、信じて使うことができないのだ〟と思うシーンなど、ハッとさせられる。
そんな信玄に、息子の信綱・昌幸と共に仕え、武田家での地位を固めなければならないのだから、幸綱の苦労は尽きない。特に本書では、信玄と継嗣の義信が決裂。義信が今川家と内通して謀叛を企てたという嫌疑に連座することになる。絶体絶命の危機を、表裏比興の者として、したたかに乗り越えていく幸綱が、いぶし銀の魅力を発揮していた。
さらに、上泉伊勢守が籠城を指揮する箕輪城を、奇策により攻略する。おお、本書は幸綱のひとり舞台だと感じていたら、ラストを読んで納得。世代交代をする幸綱に、作者が与えた花道だったのだ。なるほど、史実を使って、こんな表現もできるのか。幡大介、やってくれるものである。
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