稲葉稔の「新・問答無用」シリーズ第四弾が上梓された。紆余曲折を経て、江戸の町年寄の配下となり、やっかい事を解決している柏木宗十郎。今回は、ネズミ講まがいの騙り騒動を追うことになる。
薬を入れた葛籠を売れば、成功報酬が入ってくる。美味しい儲け話に引っかかった人が続出し、被害総額は数百両になった。多数の苦情を受けた町年寄は、宗十郎に調査を依頼。かくして騙りを働いた男たちを捜す、宗十郎の地道な聞き込みが描かれる。
その一方で、騙りたちの正体と、殺人まで起こった内紛も綴られる。早い段階から騒動の裏側が披露されるが、読む気が削がれることはない。軽快なテンポで進むストーリーに乗せられ、ラストまでページを繰る手が止まらないのである。そして貧苦から抜け出すための努力が、いつしか醜い出世欲に変わってしまった、ある男の姿に、人間のやりきれなさを発見してしまうのだ。このシリーズ、相変わらず〝問答無用〟の面白さである。
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