第四回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞した、宮本昌孝の名作が、ついに文庫化された。全三巻の大長篇だが、一気読み必至の面白さである。
織田信長に初期から仕えた猛将・森三左衛門の三男に生まれた乱丸。十三歳で信長の近習となった少年は、才幹を発揮しながらも、本能寺の変により、主君と共に死去する。享年、十八であった。
作者は、この若者の短き生涯を、確かな史観と、図抜けた想像力によって、歴史の中に雄々しく屹立させた。信長の近習という立場から見た戦国乱世の人物や史実が、とにかく読みごたえあり。よく知られたエピソードが、こんな風に描かれるのかと、目から鱗が落ちまくりだ。
一方、少年時代から続く石川五衛門との確執や、キリシタンのアンナとの恋により、ストーリーが豊かに膨らんでいく。そして、織田信長と乱丸との間に結ばれる、魂の父子関係に、熱い感動が込み上げてくる。物語を愛するすべての人に、自信を持ってお薦めする作品なのだ。
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