元尼崎藩江戸家老の塩谷隼人と、道場主の日々野左内。牧秀彦作品の二大キャラクターが共闘する「中條流不動剣」シリーズも、第四弾に突入した。
尼崎藩の農民だという一団による、大目付への直訴は、隼人に恩のある大身旗本・松平信十郎によって阻止された。だが、恐るべき剣の使い手により、信十郎は傷を負った。いち早く騒動を知った隼人は、仲間たちと共に動き出す。やがて騒動の裏に潜む者の正体を知り、敵地へと乗り込むのだった。
尼崎藩を取り潰そうとする敵の正体は、早い段階で判明する。しかし読者の興味が削がれることはない。忠義を捧げた藩のために奮闘する隼人と、彼を助ける仲間たちの行動に、胸が熱くなるのである。
さらに大目付見習いで、正義感の強い旗本・池田長義が一件に介入することにより、隼人とは違う立場の、忠義の在り方が示される。ふたつの忠義の先にある、未来への希望。それが本書の読み味を、気持ちのいいものにしているのだ。
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