鈴木英治の「無言殺剣」シリーズは、第八弾になって、さらにテンション・アップ。奈良を目指して旅をする、喋らぬ用心棒・音無黙兵衛と、彼を慕う伊之助は、なんと〝百忍〟になろうかという大勢の伊賀忍者と、死闘を演じるのだ。伊之助を鍛えるために非情な行動に出ながらも、人間味を見せるようになった黙兵衛。だがそれゆえに、愛する者たちの禍根を絶とうと、壮絶なチャンバラを繰り広げることになる。血風が吹き荒れる終盤の斬り合いに、興奮せずにいられない。
もちろん、そこに至るまでのストーリーも面白い。一度は黙兵衛たちと離れながら、伊之助への恋心により、ふたりを追う初美。雲助に襲われそうになった彼女は、前作で伊之助と知り合った、おきさという女性の世話になり、ともに奈良へと向かうのだ。
また、初美が権力者に狙われる原因となった、過去の事件の真相も、徐々に明らかになってきている。ますます盛り上がるシリーズの今後が、楽しみでならない。