デビュー作を含む連作『虫封じ〼』で、新たな妖怪時代小説の可能性を見せてくれた立花水馬が、またやってくれた。本書は、人間と河童が手を携えて悪に挑む、ユニークな作品である。
家財を投げうって新堀川の普請を成し遂げたものの、長屋でわびしく死んだ合羽屋の喜八。息子の喜助は、弔問に訪れた河童のぎーちゃんから、憎んでいた父親の普請を、「世の為人の為」が好きな、大勢の河童が助けていたことを知った。これを機に喜助は、名を喜八に改める。そして、ぎーちゃん共に、さまざまな事件にかかわることになるのだった。
子供攫いに、連続殺人。人間と河童が相棒になって、事件に立ち向かっていく。ミステリー仕立てのストーリーが、愉快痛快だ。
しかも一連の事件を追う過程で、「世の為人の為」の真の意味が浮き彫りになる。誰かの為に尽くすことで、己も満足する。そんな人間だけの在り方を、人間と河童、主人公たちと悪党を対比させて、鮮やかに表現していたのである。