宿敵との激しい闘いに音無黙兵衛が勝利し、「無言殺剣」シリーズの第一部は完結した。だが、主人公たちの旅は終わらない。第二部の開幕を告げる本書では、一緒に旅をしていた初美を寺に残し、黙兵衛と伊之助が東海道を西に向かう。そんなふたりに、伊賀忍者にして最強の幻術師である春庵が、魔手を伸ばすのであった。
さまざまな因果因縁が積み重なり、複数の勢力から狙われる黙兵衛と伊之助。桑名服部家の九蔵に率いられた忍者集団に襲われるなど、剣戟の響きが絶えることはない。さらに幻術師の春庵が、いままでの敵とは違った方法で攻めてくる。ここで明かすわけにはいかないが、なるほど、この手があったのかと、感心してしまった。尽きることなき作者のアイディアは、凄いとしかいいようがない。
また、黙兵衛との出会いと交誼により、善き資質を開花させていく、伊之助の成長も、嬉しい読みどころになっている。第二部になって、ますます快調なシリーズである。