書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

秋萩の散る

澤田瞳子/著

出版社:徳間書店
刊行日:2016年10月7日
価格:1,500円+税
判型:四六判上製

amazon.co.jpセブンネットショッピング

TSUTAYAオンラインショッピング楽天ブックス

 デビュー数年にして、歴史・時代小説界を担う作家のひとりとなった、澤田瞳子の新刊が上梓された。奈良時代を背景とする、短篇五作を収録した歴史小説集だ。
 冒頭の「凱風の島」は、帰国中の遣唐使が寄港した、阿児奈波(沖縄)が舞台である。そこで、一行に加わっていた高僧・鑑真の扱いを巡り、遣唐大使と福使が対立。三十五年ぶりに祖国に戻る阿倍仲麻呂も絡めて、人の世の有為転変と、索漠とした時の流れが綴られていく。
 この他、吉備朝臣真備が南の島で亡き友の真意を知る「南海の桃季」、デビュー長篇『孤鷹の天』を彷彿とさせる「夏芒の庭」、いきなり現れた帝の異母弟の対応に石上朝臣宅嗣が苦慮する「梅一枝」、帝に人生を歪められた道鏡が己の本心に気づく「秋萩の散る」と、どれも読みごたえあり。
 また、各話が時代順に並べられており、通読することで、歴史のうねりが感じられた。作者の捉えた奈良時代と、そこに生きる人々が堪能できるのである。

細谷 正充

ほそや まさみつ

著者紹介ページへ
[PR]