元尼崎藩江戸家老の塩谷隼人。道場主の日比野左内。松平定信の命じる〝陰仕置〟をしていた、松平蒼二郎。牧秀彦作品の主人公三人が、「中條流不動剣」シリーズ第三弾で、本格的に手を組んだ。これだけで作者のファンなら、興奮が止まらないだろう。
大川で旗本の倅に追われる、和代という女性を助けた隼人。これが縁になり、三年前に行方不明になった父親の一件で、肩身の狭い思いをしている和代と、彼女の弟の苅田平吉を助けるべく、左内たちと共に動き出す。一方、蒼二郎は、裏稼業の仲間が引き受けた仕事に絡んで、金貸しの九十九屋一蔵という男を知るのであった。
テンポよく話を進める作者は、途中で、意外な事実を投下。これにより隼人たちと蒼二郎たちの行動が、ガッチリと結びつく。しかし、ストーリーの行方は、まったく読めなくなった。ハラハラしながらページを捲り、たどり着いたラストは苦い。だが、このビターな味わいが、本書の魅力になっているのである。
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