朝廷の弱みを握るため、老中・松平定信から禁裏付を命じられた東城鷹矢の苦闘を描く、上田秀人の「禁裏付雅帳」シリーズの第三弾が刊行された。舞台と人物を設えた前巻を土台にして、物語は激しく跳ねた。
まず、鷹矢の命を狙う七人の刺客が、ついに襲撃してきたのだ。上田作品には珍しく、鷹矢も刺客も、剣の腕は凡庸。でも、だからこそ斬り合いの行方が見えない。危なっかしいチャンバラ・シーンにドキドキハラハラ。こういう方向で、ストーリーを盛り上げるとは思わなかった。やってくれるものである。
さらに剣難だけでなく、女難まで鷹矢に迫ってくる。彼を朝廷側に取り込もうとする下級公家の温子に続き、それを警戒した幕府から武家娘の弓江が送り込まれたのだ。まったく性格は違うが、どちらも気が強い温子と弓江に挟まれた鷹矢は、私生活まで荒れ模様。そんな主人公が、いかなる闘いを繰り広げるのか。シリーズの今後が、ますます楽しみなのである。
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