八歳の天才博徒・武吉の活躍を描く「丁半小僧武吉伝」シリーズでデビューした沖田正午は、以後、文庫書き下ろし時代小説界で、ユニークな作品を発表している。最新作となる本書もそうだ。主人公は、四年前に隠居した、元川越藩主の秋元
そんな凉朝が、
藩主時代の人脈を使う一方、自らの足で関係者の当たる凉朝は、まるで私立探偵のようである。事件の意外な展開や、新たな事実が判明するにつれ、あやふやになっていく善悪の構図も面白い。隠居大名と、その仲間たちが躍動する痛快時代ミステリー。ぜひともシリーズ化してほしいものだ。