書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

隠居大名世直し綴り

木遣り未練

沖田正午/著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間書店
刊行年月:2016年9月2日
価格:650円+税
判型:文庫

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 八歳の天才博徒・武吉の活躍を描く「丁半小僧武吉伝」シリーズでデビューした沖田正午は、以後、文庫書き下ろし時代小説界で、ユニークな作品を発表している。最新作となる本書もそうだ。主人公は、四年前に隠居した、元川越藩主の秋元すけとも。香師の娘の香奈と、元剣術指南役の楠木又兵衛とせいで暮らしながら、田沼意次の金権政治に批判の眼を向けている。
 そんな凉朝が、ひいの辰巳芸者から、弟の伊ノ吉が行方不明になったとの相談を受けた。また、材木商たちの、怪しい動きも知る。さっそく動き始めた凉朝だが、伊ノ吉の斬殺死体が発見され、事件は複雑な様相を呈していく。
 藩主時代の人脈を使う一方、自らの足で関係者の当たる凉朝は、まるで私立探偵のようである。事件の意外な展開や、新たな事実が判明するにつれ、あやふやになっていく善悪の構図も面白い。隠居大名と、その仲間たちが躍動する痛快時代ミステリー。ぜひともシリーズ化してほしいものだ。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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