和久田正明の「はぐれ十左暗殺剣」第六弾は、日本橋で起きた白昼の凶行から始まる。鳥見役・鉄砲箪笥奉行同心・市村座の役者・鰹節問屋の内儀。まったく関係のない四人が、浪人者によって斬り殺されたのだ。しかも逃亡した浪人も、何者かによってすぐに殺された。この一件を調べるのが、曲折を経て、火附盗賊改め方の同心になった鏑木十左である。若手同心を使いながら、地道な捜査を進める十左だが、鉄砲箪笥奉行同心の妻が、かつて婚姻の約束をしていたものの、ある事件によって別れることになった田鶴であることを知る。そして……。
冒頭のド派手な事件で、がっちりと読者の興味を掴んだ作者は、被害者を当たる地道な捜査を、面白く読ませる。脇筋の話にまで、長篇になるだけのネタを仕込んでくるのだから、ページを繰る手が止まらない。その果てにたどり着いた、幕府を震撼させる事件の真相と、敵の首魁の正体にビックリ仰天。最後の最後まで、楽しませてくれる作品だ。