早見俊の戦国小説。しかも主人公は、戦国の暴れん坊・水野藤十郎勝成だ。これは面白いだろうという予感は、見事な大当たりとなった。
物語は、本能寺の変から始まる。いち早く、この変を知った藤十郎は、領地の三河刈谷に赴き、援軍を率いて京に戻ることになった。しかし伊賀越えの最中、
後に〝鬼日向〟と呼ばれ、畏れられるようになる藤十郎も、まだこの頃は、酒と女と戦に夢中な猪武者であった。でも、それがいい。大局観も無いまま戦を求めるかと思えば、自分を狙った女を愛する。藤十郎の無鉄砲な行動に、若さが弾けているのだ。猪武者が、いかにして有名な戦国武将になり、大名になったのか。その軌跡を見届けたい。