書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

番付屋小平太

鷹井伶/著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2016年8月5日
価格:620円+税
判型:文庫

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 相撲の番付を模した『見立番付』が大流行している江戸。辛口の江戸っ子にも評判の、番付屋がいた。深津小平太。火付盗賊改方の頭をしている旗本・深津弥七郎正英の三男だが、父親と折り合いが悪く家を飛び出して、こんな稼業で暮らしている。
 小平太の番付が評判なのは、彼が潜入取材をしているからである。この設定を思いついたとき、作者の鷹井伶は、膝を打ったのではなかろうか。なぜならバラエティに富んだ世界を舞台にすることができるからだ。事実、本書には短篇四作が収録されているが、吉原・町火消し・板前・歌舞伎と、扱っている世界が違っている。実に優れたアイディアだ。
 しかも各話の内容が面白い。第一話では、吉原のおいらんを巡る騒動が、粋に収束する。第二話と三話では、事件を通じて、町火消しの心意気や板前の矜持が示された。そして第四話では、歌舞伎役者の野暮な色事に、鉄槌が下るのである。どれも読めば温かな気持ちになれる。それが本書の身上なのだ。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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