言葉を発することなき謎の浪人・音無黙兵衛。彼に心酔する若者の伊之助。かつて一家を惨殺された初美。鈴木英治の「無言殺剣」シリーズ第四弾は、前作から引き続き、三人が中山道を歩んで行く。いままで不明だった旅の目的だが、どうやら初美を護るためだったらしい。一家惨殺の真相を闇に葬ろうとする者と、それを暴こうとする者。徳川幕府の権力者同士の暗闘が、初美に襲いかかろうとしていたのだ。
本書の前半は、黙兵衛たちの歩みを旅情豊かに描きながら、初美を巡る状況を明らかにしていく。それと併せて、第一弾で黙兵衛が暗殺した大名の件から、彼を狙う横山佐十郎の行動も活写。新たな激突を予感させる。
そして後半のクライマックス、服部九蔵率いる伊賀忍者の集団と、初美を護る黙兵衛・伊之助と僧兵たちの乱戦が勃発。激しいチャンバラの果てに、ショッキングなラストが待ち受ける。ここで続くとは、生殺しもいいところ。次巻を早くと、渇望してしまうのだ。