書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充
細谷 正充

のたり同心落とし噺

こがねもち

飯島一次/著

レーベル:徳間時代小説文庫
出版社:徳間文庫
刊行年月:2016年7月1日
価格:640円+税
判型:文庫

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 近年、文庫書き下ろし時代小説界で存在感を増しているいいじまかずつぐが、いよいよ徳間文庫に登場した。新米同心を主人公にした捕物帖だが、ストーリーが一筋縄ではいかない。
 すぐにもらい泣きをするほどのお人好しだが、出世にも手柄にも興味がない、南町奉行所じょうまわりの新米同心のうえくさへいすけ。そんな主人を馬鹿にする同僚どもを、見返してやろうと意欲を燃やす小者のきち。デコボコのようで相性抜群のふたりのやり取りが楽しく、どんどん読んでしまうのだが、なかなか事件が始まらない。全四章のうちの第四章に入って、ようやく殺人が起きるのだ。
 がねもちが評判の店の主人が殺されるのだが、死因は小判を口に突っ込まれての窒息死。おまけに事件の真相は、意外な形で明らかになる。ちらりと出てきたさんゆうていえんちょうを使った、ラストのオチも秀逸。最初から最後まで、作者の手腕に翻弄されてしまった。おそらくシリーズ化されると思うので、今後のふたりの活躍が、楽しみでならない。

細谷 正充

細谷 正充

ほそや まさみつ

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