「醒睡の都 岐阜信長譜」連載を終えて
一年間に亘って連載致しました、「醒睡の都 岐阜信長譜」、読者の皆様には楽しんで頂けましたでしょうか。サブタイトルにありますように、岐阜城主であった頃の信長を描いた作品です。
さて、一般的な信長像とはどんなものでしょう。先見性に富み合理的な思考をし、迅速な決断力と類稀な行動力で天下統一に邁進した。一方で裏切り者や逆らう者は情け容赦なく殲滅する冷酷非情で古き物を疎んずる破壊者、といったところでしょうか。
連載を終えて私が感じるのは信長の人間臭さです。信長は己を過信する余り失敗することもあれば、鵜飼や相撲を楽しみ京文化への憧れを抱き続けました。合理性と非合理、冷酷さと寛容さ、決断力と優柔不断さを合わせ持ち、そして何よりも強い好奇心が信長を動かしていたように思います。好奇心は決して新奇な物ばかりではなく、伝統文化へも向けられました。連載の間、私の脳裏には切れ長の目を好奇心で爛々と輝かせる人間臭い信長がイメージされていました。
信長と関わった人物群、敵、味方問わず信長の好奇心によって救われたり、成功したり、翻弄されたり、破滅させられたりするドラマ、「醒睡の都 岐阜信長譜」はこの九月、『うつけ世に立つ 岐阜信長譜』として刊行されます。
大幅に加筆、改稿を加え、よりドラマチックに仕上げましたので連載をお読み頂いた皆様にも面白く読んで頂けると自負しております。
『うつけ世に立つ 岐阜信長譜』(徳間書店より刊行)をよろしくお願い申し上げます。
[平成28年(2016)8月27日]