書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

疾れ、新蔵

志水辰夫/著

出版社:徳間書店
刊行年月:2016年6月8日
価格:1,700円+税
判型:四六判

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 冒険小説のゆうであり、近年は時代小説に力を入れているみずたつの最新長篇は、江戸時代を背景にした、逃走と追跡のドラマだ。えちいわふね藩の江戸中屋敷から、十歳になる姫が、大目付と一緒に国元から金を運んできたしんぞうという男に連れ出された。かつて姫の子守りをしていた新蔵が目指すのは、国元で独自の勢力を持つ春日荘。すぐさま放たれた追っ手をかわし、道中の仲間を増やしながら、新蔵は春日荘へ向かう。
 逃走と追跡のドラマは、冒険小説の十八番であり、いかにも作者らしい物語といっていい。血肉を持った登場人物の描き方も見事であり、そこから生まれるエピソードの連続に、ページを繰る手が止まらなかった。
 さらに、元天領の村の秘密や、ある人物のおや二代にわたる任務などがからまり、物語の面白さが増していく。読者の意表を突きながら、嬉しい気持ちにしてくれる、ラストも素晴らしい。ベテランの腕前が存分に振るわれた、読ませる作品である。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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