辻堂魁の「仕舞屋侍」シリーズは、第三弾の本書で、素敵な女性を登場させた。女渡世人のおまさである。訳あって捨てた江戸に戻る途中、両親を殺されたお玉という娘を救ったことから、彼女は事件に巻き込まれていく。自身も重い過去を抱えながら、お玉を助けるおまさの行動に、温かな気持ちになってしまうのだ。
もちろん、主人公の九十九九十郎の、いぶし銀の魅力も健在だ。元腕利きの御小人目付で、いまは〝仕舞屋〟という揉め事処理屋を営んでいる九十郎。仕事でおまさを探したことから、お玉を巡る事件にかかわり、颯爽と悪党たちを退治する。といっても、刀を抜くのは最後の手段。普段の彼は、できるだけ揉め事を丸く収めようとする。
それは旗本の飼っている秋田犬に追いかけられた子供が怪我をした一件を見ても明らかだ。人の心の機微を見抜いた九十郎の始末の付け方に、感心しきり。強さと優しさを兼ね備えた主人公の活躍が、たまらなく楽しいのである。