気鋭・福原俊彦の新シリーズが開幕した。主人公は平賀源内。博物学から戯作まで、マルチな才能を発揮した江戸の天才だ。もともとは讃岐藩松平家の下士だったが、いまは妹婿に家督を譲り、神田の長屋で暮らしている。そんな源内と、娘御用聞きのお祥が出会うのが、第一話「薬品会の顛末」だ。薬品会で起きた盗難未遂事件を鮮やかに解決する、源内の手際が見事である。なお物語のラストでお祥が、源内いる長屋の住人となった。
続く第二話「神田明神芝居の始末」は、宮地芝居の役者殺しに、源内とお祥が挑む。事件そのものは単純だが、同じ長屋の住人の歌舞伎役者の正体にビックリ仰天。この作者、やるものである。
そして第三話「松平江戸屋敷の騒動」では、旧主である松平家の騒動にかかわった源内が、意外な真相を暴き出す。武士を捨てた源内の心意気や、お祥の人間としての成長など、読みどころは満載。田沼意次もちらりと登場して、これからが楽しみなシリーズだ。