上田秀人の「織江緋之介見参」シリーズは、第六弾にして、常にも増した面白さを発揮する。緋之介と因縁のある、奏者番の堀田正俊が、新たに放った刺客。それは大奥別式女衆だった。三人の別式女を鎧袖一触した緋之介だが、この結果すら正俊の手の内だというのだから、権力者の策謀は凄まじい。
一方、前作から始まった、妖刀村正を巡る争奪戦は、ついに徳川幕府を根底から揺るがしかねない、神君家康の大秘事へと発展。徳川光圀の異母妹で、緋之介の許嫁である真弓が村正を所持していたことから、主人公は否応なく闘いの渦に巻き込まれる。複数の勢力が入り乱れる中、愛する者を護るため、太刀をふるい続ける主人公の雄姿に、心が昂ぶる。
さらに、ラストで明らかになる、神君家康の大秘事がとんでもない。相変わらず、作者の着想はずば抜けている。また、暴かれた大秘事の扱いも巧みであった。このレベルがスタンダードなのだから、作者の人気が高いのも、当然のことといえよう。