『鬼船の城塞』と漁師町
子どもの頃、二年間だけだが、坂ノ下という鎌倉の古い漁師町に住んだ。
いまの坂ノ下は〝
だが、僕の記憶の中には、大正時代に建てられた町屋と
引っ越してきた夏、休みに入るのを待ちかね、胸を
波頭にキラキラ光る銀色の反射がどれもこれも波に
海辺の嵐を初めて迎えた晩夏の夜には、枕元まで大波が押し寄せているような錯覚に
嵐が過ぎ去った次の朝、見たことがない何かを求め、母と弟と浜辺を散歩した。
波打ち際に散らばる魚の
そうか、水平線の向こうには見知らぬ国があるんだ!
嵐の名残は、海を隔てた世界への大きな憧れを、僕の心にかき立てることとなった。
海洋冒険小説が書きたいという気持ちの原点には、
[平成28年(2016)5月25日]