本書は高橋由太の「もののけ犯科帳」シリーズの第五弾だ。収録作は三篇。冒頭の「明日きみはハゲになる」は、人間と妖怪が仲良くやっている飯屋「稲亭」の面々が、いきなりハゲになるという怪異が発生。その原因となった、軍鶏鍋屋の娘と侍の恋を巡り、盗賊と妖怪入り乱れての騒動が巻き起こる。
時代小説ファンならすぐに気づくが、この話、池波正太郎の『鬼平犯科帳』のパロディになっている。随所に出てくる、原典を捻った人名や店名に大笑い。しかも後半には、若き日の鬼平その人まで登場するのだから、作者の遊びも半端ない。なんとも愉快な作品だ。
続く表題作は、シリーズのヒロインの筧統子が飼っている雷獣クロスケが、猫の幽霊を師匠にして、猫の仲間になろうと修業をする。さらにラストの「明日きみはお久美に会う」は、主人公たちの敵であるお久美が、番町皿屋敷のお菊と出会い、コントを繰り広げる。こちらも愉快なストーリーであった。