歴史ものにかこつけて、冒険小説が書きたかったのです
『明治剣狼伝 西郷暗殺指令』は、ぼくのデビュー作です。第七回角川春樹小説賞において、「巨眼を撃て」のタイトルで第一回目以来の特別賞に選ばれ、第五回歴史時代作家クラブ賞では新設されたばかりの文庫新人賞をいただくことになりました。
明治十年に勃発した日本最後の内乱である西南戦争。幕末から明治にかけての小銃技術史。日本初の国産ライフル小銃〈村田銃〉を発明した
しかし、やりたいことは一つでした。
冒険小説が書きたかった。ハードボイルドがやりたかった。明治を舞台にし、西南戦争を背景にしたのは、冒険小説につきものの銃器を扱うためでした。現代ものの制約を回避し、テクノロジー関係を自分でも理解できる範囲に制限するためでした。自分を育んでくれた娯楽小説の要素を残らず吐き出すためでした。
ぼくは逃避型の人間である。創作意欲の源は、すべてそれである。
十五年ほどのライター生活を経て、市場縮小によって仕事としては成立しなくなってきた。地元に戻ったものの、いまさら就職する自信もなく、預金を頼りに小説の投稿生活へ突入した。心の支えは、学生時代から買いためてきた小説やマンガなど。書きながら、ひたすら読み
そして、運良くデビューはできました。が、不況知らずといわれた官能小説さえ売れ行きが落ち込み、もはや最後の聖域もなく……それでも、一作でも多く、読者に楽しんでいただける娯楽作品を提供できれば、と考えています。
娯楽小説を。
愚かしいほど一心不乱に、切実なほどの娯楽小説を!