思わぬ転機
甲州道中第一の宿場・内藤新宿を舞台とした『もぐら屋化物語』シリーズは、幸せな作品のはずだった。主人公は会津藩脱藩浪人。他の小説でも登場させたお気に入りで、その人物を再び主役にしてもよいとお許しが出た。加えて内藤新宿という場所は、会津初代保科正之と縁のある高遠藩主のお墓があったり、担当様がたまたま会津藩のことにお詳しかったりと、つぎつぎと面白い繋がりが出てくる。何より書いていてとても面白かった。しかしシリーズ二作目を書いている途中で、自身に思わぬ転機が訪れた。もはや筆を折るしかないという事態。だがとにかく二作目を仕上げてからだと、気力を奮い立たせた。これが最後という覚悟で担当さんの返事を待ち、結果、まだこの仕事をつづけられそうだという希望がもたらされた。
人生で最も苦しかったときに、手を差し伸べてくれた人たちのことは、ずっと忘れないだろう。この作品を機に、改めてデビューしなおしたという気持ちで現在に至る。
シリーズ二作目のあと、舞台化が決まり、三回の上演を数えた。
歴史・時代小説というものが、様々な形を取り、より若い皆さまへ広まってくれたら嬉しいし、自分もその努力をつづけていきたい。
そして「もぐら屋」は、やはり幸せな作品だったのだ。
[平成28年(2016)4月19日]
『もぐら屋化物語』シリーズはこちらです。
もぐら屋化物語〈二〉
用心棒は婚活中
レーベル:廣済堂モノノケ文庫
出版社:廣済堂出版
刊行年月:2013年9月
価格:619円+税
判型:文庫




もぐら屋化物語〈三〉
用心棒は就活中
レーベル:廣済堂モノノケ文庫
出版社:廣済堂出版
刊行年月:2014年9月
価格:648円+税
判型:文庫




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