引札収集棚

澤見 彰
澤見 彰

ヤマユリワラシ

遠野供養絵異聞

澤見彰/著

レーベル:ハヤカワ文庫JA
出版社:早川書房
刊行年月:2016年1月
価格:700円+税
判型:文庫

amazon.co.jpセブンネットショッピング

TSUTAYAオンラインショッピング楽天ブックス

一枚の絵に魂を託して

 まれに「自分が書かねば誰が書くのか」という題材に出会える瞬間がある。書き手さんは誰しもきっとあるはず。岩手県とお市を中心に数多く残る「ようがく」を見つけたときも、まさにその瞬間だった。
「供養」というからには死者を描いたものだが、絵が持つ明るいふんと鮮やかな色づかいにまず驚かされる。また遠野という神秘的な土地に、世にも美しく謎めいた絵画が生まれたのは必然に思えて、いてもたってもいられず取材に出かけた。だが――そこで知ったのは、美しさの裏にある厳しい歴史だった。衝撃だった。
 遠野には二面性があるという。土地に縁もゆかりもなかった自分だけれど、遠野の光と影を描ききらねばならぬと心に決めた。
 テーマにあわせ、これまでとは少し文体も変えた。ゆえに読んでくださった方々の反応が心配だったが……それでも、ある人に言って頂けた。「こういう作品も書けるんだね。いいじゃない」と。本当にありがたかった。それが本作、幕末の遠野に生きた名もなき人々の物語『ヤマユリワラシ』だ。
 正史には載らないけれど、きっと彼らは幕末の激動の時代を生きていた。ひっそりと、だが力強く、一枚の絵に魂を託して。そのぶきを、ともに感じて頂けたらとても嬉しい。

[平成28年(2016)4月15日]

[PR]