一枚の絵に魂を託して
まれに「自分が書かねば誰が書くのか」という題材に出会える瞬間がある。書き手さんは誰しもきっとあるはず。岩手県
「供養」というからには死者を描いたものだが、絵が持つ明るい
遠野には二面性があるという。土地に縁もゆかりもなかった自分だけれど、遠野の光と影を描ききらねばならぬと心に決めた。
テーマにあわせ、これまでとは少し文体も変えた。ゆえに読んでくださった方々の反応が心配だったが……それでも、ある人に言って頂けた。「こういう作品も書けるんだね。いいじゃない」と。本当にありがたかった。それが本作、幕末の遠野に生きた名もなき人々の物語『ヤマユリワラシ』だ。
正史には載らないけれど、きっと彼らは幕末の激動の時代を生きていた。ひっそりと、だが力強く、一枚の絵に魂を託して。その
[平成28年(2016)4月15日]