今年のNHK大河ドラマ「真田丸」が好調だが、幡大介の「真田合戦記」シリーズも絶好調である。第四巻となる本書では、関東管領・山内上杉家の衰退により、巨大な空白地帯と化した北武蔵から上野国一帯を巡り、越後の上杉景虎と、甲斐の武田晴信が激突する。いわゆる、川中島合戦である。
周知のように川中島合戦は、十年余にわたり、第五次まで行われた。本書では、その第一次から三次までが書き込まれている。悲願の旧領回復を果たし、武田家の武将として働く真田幸綱が、要所々々で見せる知謀が恰好いい。幸綱の息子の信綱のパートを作り、上杉方の動きと、景虎のキャラクターを浮き彫りにする手法も見事である。
さらに本書で感心したのが、善光寺の位置づけだ。善光寺を、東日本の商業と金融と仏教の中心地とし、戦国武将が欲しがる重要拠点としたのである。これにより川中島合戦にも、新たな意味が与えられた。歴史小説を読む楽しみは、ここにあるのだ。