歴史時代小説への憧れ
私は青年期から、吉川英治
氏や柴田錬三郎
氏の著作に耽溺するほど、読みふけってきました。そしていつか読者の耳になじみのある歴史上の実在の人物が、江戸の市井を舞台とした時代小説の世界の中で、八面六臂の活躍をする歴史時代小説に挑んでみたいと折をうかがってまいりました。
そんな私の宿願がようやく実現したのが、本作『野分の剣』と、その続編である『副将軍の奸計』です。
天保のはじめ、本丸老中・水野忠成から西丸老中・水野忠邦へと権勢が移行する時代を舞台に、主人公の下級御家人である剣士・結城慎之助とその妻・吉野が、両水野のすさまじい権力闘争に巻き込まれていく。
剣が峰の危難に襲われた夫婦が、実戦剣を使わせては江戸一と称される不良旗本・勝小吉(勝海舟の実父)と、小吉の甥で剣聖と畏敬される男谷精一郎の助成を受けながら、九死に一生を得ていく物語です。
全編がこれ暗闘と剣戟、そして謎解きの連続で、いわゆる時代小説とは異なったテイストのものとなっています。
主人公と勝、男谷という三人の剣士の友情を描いておりますが、明日を切り開くために、相携えて危難に立ち向かっていく夫婦の絆を描いた物語でもあります。是非、ご一読を請う次第です。
[平成28年(2016)4月4日]
『副将軍の奸計』はこちらです。
夫婦隠密行
副将軍の奸計
レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行年月:2013年5月
価格:629円+税
判型:文庫




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