背水の陣
――まだ十年残っています。
所属長の言葉が響いた。職場に迷惑を掛けずに年度末に辞めるためには十月には辞意を伝えなければならない。そのときも
小説を書き始めて九年、すでに五十一歳になっていた。仕事も年々忙しくなり、人生の
ところが、三月半ばには第六回角川春樹小説賞の最終候補に残ったという連絡を頂いた。退職して一月半で、素敵な担当編集者さまと出会うことができた。僕の場合には、捨て身の方向転換が必要だったようだ。
背水の陣で書いたから、作中の主人公たちは追い詰められているはずである。彼らがどんな運命をたどるのか、ぜひお手にお取り頂いてお確かめ下さればと願うのである。
デビューしたって背水の陣のままじゃないかって? それを言っちゃぁ、おしまいよ!
[平成28年(2016)3月15日]
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