愛する女たちの死を背負い、吉原暮らしを続ける若侍の彷徨を描く「織江緋之介見参」シリーズも、はや四巻となった。緋之介と因縁を持つ堀田家の江戸屋敷で起きた、煙硝蔵の爆発。それを発端に、老中の阿部豊後守と、老中格の松平伊豆守の思惑が入り乱れる。そして騒動にかかわった緋之介は、次々と襲いくる刺客と対峙する。
と、いつものように血風吹き荒れる内容だが、今回は刺客の女を斬ったことで、緋之介が深い後悔に陥る。それを救うのが、吉原の藤島太夫や、水戸光圀の異母妹の真弓といった女性陣だ。緋之介の態度は、かえって女を侮るものだといい、主人公を立ち直らせるのである。いや、上田作品の女性は、常に強くて魅力的だ。
また、緋之介を狙い続けてきた松平伊豆守の妄執が明かされる終盤で、物語は一気に巨大なスケールを獲得する。これぞ作者ならではの読みどころだ。まだ未熟な緋之介が切り拓く道は、どこに向かうのか。ワクワクしながら続きを待ちたい。