双葉文庫デビュー第一作
デビューしてからもなかなか仕事がなくて、そんなとき、声をかけていただいたのが双葉社の編集者Hさんでした。
勧善懲悪の痛快娯楽ものを書いてみませんかとのご提案に小躍りしました。頭にぱっと浮かんだのが映画の「旗本退屈男」や「鞍馬天狗」の世界。
一週間でプロットを書きあげ見ていただきました。
思い切り派手な衣装で、見得を切って、ばったばったと悪を斬る。宗十郎頭巾で素顔を隠す謎の剣士。その名は〝浮世頭巾〟。
主人公関口格之介は若くて美男で剣の名手。旗本の次男で冷や飯食い。家を出て剣で身を立てようとするのですが、世は泰平の文政年間。剣術は流行らない。
子供の頃から学問は苦手で滑稽な戯作本が大好き。そこで伝手を頼って人気作家式亭三馬の弟子となり、師から勧善懲悪の戯作を書くようにいわれます。
頭をいくらひねってもいい案が浮かばない。ふと思いついたのが、自分自身が謎の剣士となって、夜の巷で悪人退治。それをそのまま書けばいい。
芝居好きの友といろいろ相談して、衣装をそろえ、名乗りの文句もひねり出します。
「泰平の浮世の闇の悪を斬る。人呼んで浮世頭巾」
戯作執筆のために始めた浮世頭巾の趣向でしたが、やがて天下を揺るがす大陰謀に巻き込まれていきます。
格之介は師から朧屋彦六の名をもらい、その後もエレキテルを使った犯罪や赤穂義士を真似た盗賊一味と戦いますが、戯作者としては売り出せないまま。
筆を握ってうんうん唸る彦六は、そのまま当時の私自身と重なりました。
[平成28年(2016)3月21日]
シリーズ既刊はこちらです。
朧屋彦六 世直し草紙
風雷奇談
レーベル:双葉文庫
出版社:双葉社
刊行年月:2013年7月
価格:619円+税
判型:文庫




朧屋彦六 世直し草紙
四十七人の盗賊
レーベル:双葉文庫
出版社:双葉社
刊行年月:2013年11月
価格:629円+税
判型:文庫




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