フラメンコと異文化交流
長崎年表を見ていたら「丸山町長門屋の遊女満汐、蘭館上外科医の女児を出産」という一項が目に飛び込んできた。では、このお相手をスペイン人にはできないだろうか。そう考えて構想を練り始めた長篇が本作である。
異文化との出会いは以前から強い関心を持っているテーマの一つである。その底流には、異質な多くの文化が見事に融合した芸能であるフラメンコに対する思いがあるのだと思う。
フラメンコは北インド出身のヒターノ・ヒターナによって編み出された音楽であり舞踊である。だが実は、アラブ、アフリカ文化の多くの要素が溶け込んだ芸能でもある。厳格なカトリック国スペインで生まれながら、「オレ!」はイスラム教における「アッラー!」の転訛したものとされる。南米諸国のタンゴやルンバのリズムもさかんに採り入れられた。
さまざまな文化を貪欲に吸収する一方で、シンプルであり洗練されている。そんなフラメンコのステージは、いつも僕の心を浮き立たせる。
本作をお読み下さって、どこかにフラメンコのコンパス(基本となるリズム)を感じて頂ければ、望外の幸せである。
[平成28年(2016)3月15日]
単行本版はこちらです。
出版社:角川春樹事務所
刊行年月:2014年9月
価格:1,500円+税
判型:四六判




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