『歳三往きてまた』誕生秘話
二〇〇〇年九月、『SAMURAI 裏切者』(後に『新選組藤堂平助
』と改題)という本を自費出版しました。自分で本を出したからといって作家になれるものでもなく、数ヶ月ほど出版業界とは何の関係もなく過ごしました。
世に出す当てはまったく無かったのですが、次作の執筆には取り掛かっていました。小説を書くことが好きなので、出版されるとかされないとか、ほとんど関係の無い話で、書いていれば幸せなのです。
翌年の初夢は、「ある日突然出版社の編集者から原稿依頼の電話が掛かってくる」という随分と都合の良いものでした。夢を見ている間は幸せでしたが、目が覚めると現実が待っていました。会社が潰れて職がなく、お金がつきそうだという現実です。街頭のティッシュ配りのバイトに応募してかつかつ生きていました。
ところがその年のある日、突然出版社から電話が入り、「土方歳三で一本小説を書いてほしい」と依頼されたのです。そのときには三分の二ほど偶然にも土方歳三小説を書き進めていたので、翌月には提出できました。それが翌春に出版された『歳三往きてまた』です。
[平成28年(2016)3月12日]
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