書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

用心棒血戦記

上州密殺旅

鳥羽亮 /著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2016年1月7日
価格:640円+税
判型:文庫

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 老中・まつだいらずのかみ直属の隠密である、あおいじゅうざぶろうの活躍を描く「用心棒血戦録」シリーズの最新刊が上梓された。それが本書だ。こうずけまつざか藩のお家騒動を知った十三郎は、小者のへいや兵法者のかんばやしろうたちと共に、江戸から国許に向かった四人の藩士を護り、血路を斬りひらくのだった。
 と、粗筋だけ書き出すと、いつもの作品である。しかし、それが分かっていても、手に取らずにはいられない。チャンバラ・ファンのツボを、気持ちよく押してくれるからだ。たとえば十三郎の敵は、にわねん流の遣い手である。上州で生まれ広がった流派であり、上野国の松坂藩士に相応ふさわしい。こういう的確な流派のチョイスが、チャンバラ・ファンを嬉しがらせるのである。
 もちろんけんげき描写も抜群だ。一刀流の十三郎に真気流槍術の弥五郎。一方、敵方は馬庭念流の藩士だけではなく、闇目付と呼ばれる忍者のごとき一団までいる。刀槍がはしり、手裏剣が飛ぶ闘いの連続に、血がたぎってしかたがないのだ。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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