書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

しゃもじ同心捕物帳

召し捕ったり!

井川香四郎 /著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年12月3日
価格:660円+税
判型:文庫

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 しゃもじ同心とは何か。南北両町奉行所から出向して、探索よりも捕縛を主な仕事としている〝召捕掛〟の同心のことである。召し捕りを飯取りにかけて、しゃもじ同心と呼ばれているのだ。本書は、その召捕掛の筆頭同心になったこんどうしんを主人公にした、シリーズ第一弾である。信吾が、他の召捕掛の同心とぶつかり合いながら、殺し屋たちを追う「悪党狩り」から、信吾の行きつけの居酒屋の父娘が盗賊騒ぎに巻き込まれる「親知らず」まで、全四話が収録されている。
 殺し屋相手に一歩も退かない信吾は、第二話「雪割り草」で大名家、第三話「見えぬ月」で寺社奉行に立ち向かうなど、権力者の悪にも果敢に挑んでいく。どのような力にもひるまない、主人公の姿が痛快だ。
 その一方で描き出される、父娘や夫婦の情愛が、物語に潤いを与えている。信吾にてきがいしんを抱きながらも、しだいに分かり合っていく、しゃもじ同心の面々も、キャラクターが立っている。長く続けてほしいシリーズだ。

細谷 正充

ほそや まさみつ

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