書物目利所 達眼老練の四〇〇字書評 細谷正充

細谷 正充

矢立屋新平太版木帳

柏田道夫 /著

レーベル:徳間文庫
出版社:徳間書店
刊行日:2015年11月6日
価格:630円+税
判型:文庫

amazon.co.jpセブンネットショッピング

TSUTAYAオンラインショッピング楽天ブックス

 BS朝日開局15年記念と銘打たれ、十二月の五・六日と二夜にわたり放送された『大江戸事件帳 美味でそうろう』の原作本が刊行された。しかも作者は、ヒット映画『武士の家計簿』の脚本を担当したかしわみちだ。これはもう、期待しないわけにはいかない。
 主人公のかきしんぺいは、寺子屋師範にして、もくりのかわら版のたて屋(記者)である。元武士で、しんみや流居合は目録の腕前。かわら版のネタに鼻がくのはいいが、なにかと事件に巻き込まれる。
 本書には、そんな新平太が活躍する、短篇六作が収録されている。他のかわら版屋のこぎな金儲けが盗賊一味の騒動に繋がる「恩猫っかぶり」から、連続看板盗難事件を追う新平太が意外な真相を暴く「看板泥棒」まで、どれも手慣れたタッチで、楽しく読めるミステリーになっている。かわら版の挿絵を描いているつるはちや、すぐ出かけてしまう新平太の代わりに手習いを見ている隣人のお梅など、脇役陣もにぎやか。読めばドラマも観たくなる面白さだ。

細谷 正充

ほそや まさみつ

著者紹介ページへ
[PR]